何もかも「手遅れ」な親父 4

 

あっという間に社会人三年目。

 

 

社会人の洗練を受け、家に帰らない事もちらほらあり、親父の事も忘れて仕事に没頭していた。

 

 

 

そんな時に大学の頃から付き合っていた彼女に子供が出来た報告を受けた。動揺した。でも喜びの方が大きかった。最先端の技術を駆使した99%安全な障壁を掻い潜り授かったのだ。そんな我が子をなかなか芯のあるやつだ!やるな!と内心思っていた。

 

 

妊娠が発覚して一ヶ月と数週間。未だに信じられずいたが、婚姻届を出さなくてはいけなくなり、子供に背中を押されるように籍を入れた。

付き合って4年半。5年目の記念日にプロポーズしようとしていたが、せっかちな我が子のおかげで大分早まった。

 

 

 

親父にはそのうち報告するか。と思っていた。母とは離婚したが、子供からしたら唯一の親父だから抵抗はなかった。

 

そう。そのうち…ね。

 

 

 

 

そのうちを忘れるように仕事も忙しくなり、結局連絡もしていなかった。

 

 

 

 

思い出したのは親父から母に電話があった時。

どうやら嘱託で働いていたが身体の調子が優れなく、退職し叔父の家に転がり込んだようだ。母は仕方なく叔父の家に向かった。ばぁちゃんが死んでから行かなくなっていたその家はゴミ屋敷のようになっていたようだ。叔父に親父が2人して毎日寝るだけの生活をしていたようだ。母はうんざりしながら帰ってきた。次は僕も一緒に行って報告はするか。そう思っていた。

 

 

 

それからあっという間に時間が過ぎて行き、子供が産まれた。嬉しかった。僕の代は家庭を大事にして行こうと決めた。親父への報告よりも息子と嫁と過ごす時間を優先した。

 

 

 

 

それから何日が経ち、仕事終わりにラインを開くと母から「大事な話」があります。とだけ入っていた。なんなんだろう?と思いつつも家に帰ってみたら元気のない母と妹もがいた。

 

 

お父さん歩けなくて調子が悪かったから救急車で運んで検査受けたらガンだって。

僕は驚いた。あの親父が?